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合格者の皆さんへ

2013/02/20

――大学で、何を、どう学ぶか――

学長 佐々木 雄太

名古屋経済大学・同短期大学部の入学試験に合格された皆さん、おめでとうございます。大学での新しい学びに期待を膨らませている皆さんに、少し早目のメッセージを送ります。
名古屋経済大学は、大きく変化しつつある時代を生きる皆さんに必要な「学士力」を育てるための、新しい教育カリキュラムと教育体制を用意して、皆さんを待ち構えています。
人生の大きな節目のひとつである大学進学に当って想いを固めるために、一読していただけると幸いです。

1 変化の時代に必要な力とは
■世界は変化している

今、世界は大きく変化しつつあります。経済を中心に私たちの生活全体が「グローバル化」を迎えています。ヒト、モノ、カネが国境を越えて活発に移動し、私たちの身の回りにも、食べる物から着る物まで、世界のあちこちの産物があふれています。
一方、日本企業がアジアだけではなくアフリカを含む世界各地に進出して活動し、地球の反対側の地域の出来事が、私たちの日常生活に直接影響を及ぼす時代――グローバル化の時代が到来しています。また、2011年の東日本大震災と原発の大事故を経験して、産業や社会のあり方を含めて「何が大切か」にかかわる人々の価値観が大きく変化しつつあります。私たちは「予測不可能な時代」に向かいつつあると言ってよいでしょう。
このような変化の時代を生き抜くために必要な力はどんな力でしょうか。
市邨学園の創始者市邨芳樹先生は、今から100年以上も前に、建学の精神を「一に人物、二に伎倆」と示しました。先生は、この言葉に、教育は単なる知識の詰め込みに終わるのではなく、何よりも人間としてのよき資質を身に着けた「人物」を育てるべきであると唱えられたのです。
この教えが、今、あらためて輝きを持ち始めています。

■「学ぶ力」を学び取る

社会が大きく変容する時代あるいは予測困難な時代にあっては、教えられて覚え込んだ「知識」は役に立たなくなるかもしれません。情報科学や生命科学の分野をはじめ、科学や技術の進歩がいちだんと勢いを増してきたことを見ても、これは明らかです。今日、考えられないことが明日には実現するかもしれません。したがって、これまで常識とされていた知識が役に立たなくなるかもしれないのです。
そうだとすれば、皆さんに必要なのは「知識の詰め込み」ではありません。変化の時代、予測困難な時代に必要とされる力とは、これまで出会ったことのない状況に遭遇した時に、そこにどんな問題が含まれているかを発見し、その問題を解決する糸口を探し出す能力です。
これを「学ぶ力」と言ってよいと思います。皆さんに必要なのは「自ら学ぶ力」を身につけることです。これまでの「知識詰め込み」型の学びになじめなかったという皆さんも、尻込みをする必要はありません。むしろ、新しい変化の時代をチャンスだと考えてください。

2 新しい教育カリキュラムの特徴

名古屋経済大学は、皆さんが「学ぶ力を学び取る」――そんな学びを全面的に支援します。そのために、次のように、学びのシステムや学びの方法を工夫することにしました。

■皆さんに必要な授業科目を精査

これまで多くの日本の大学では、授業科目は教員の専門分野に即して立てられていました。名古屋経済大学は、これを学生本位に改めました。「本学の学生にとって、何を、どこまで学ぶことが必要なのか」という観点で教育カリキュラムを再編成しました。
皆さんは、これから4年間の課程を通じて、卒業後の職業選択を中心に人生設計(キャリア・デザイン)を進めていきます。人間生活科学部の皆さんには国家試験の合格や資格・免許の取得など目標が明確に見えていると思います。そういう皆さんは、それぞれの目標に向かって計画的に学修を進めてください。
社会科学系3学部の場合、明確な目標を持っている人はそれほど多くないと思います。そこで、大学は、皆さんをどんな人材として社会へ送り出すことができるか、あらかじめいくつかの「目指す人材像」を提示します。この「人材像」と今の皆さんとをつなぐ道のりがカリキュラムです。皆さんは、大学が提示する「人材像」と「履修モデル」を参考に「自分のカリキュラム」を編成し、それに基づいて学修を進めてください。

■専門領域にかかわる基礎力の習得を重視

大学では、皆さんは学部の学問領域に沿って専門的な知識やスキルを習得しながらキャリア・デザインを進めます。その場合、変化の時代にあっては特にそれぞれの専門領域の基礎的素養をしっかり身につけることが重要です。
社会科学系3学部のカリキュラム編成に当たって、本学は、それぞれの学部にかかわる基礎的な学びを強化することを目的に、「専門共通基礎I」、「専門共通基礎II」という科目群を設けました。この2段階の基礎科目をしっかり履修し終えるならば、社会人としての基本的な知見を備えることができると考えます。さらに高度な専門領域を学びたいと思う皆さんにはそのための授業科目も用意されています。
「専門共通基礎I」は人間生活科学部の皆さんにも開放されます。自分の学科の専門的知見・スキルと並んで、社会と向き合う・社会を理解する知見を身につけていただきたいと思います。

■転学部に道を開く

社会科学系「専門共通基礎I」、「専門共通基礎II」という科目群にはもうひとつの狙いがあります。大学入学の時点で自分が将来やりたいことを「ひとつ選択する」というのは難しいことで、入学後にミスマッチに気づくケースが少なくありません。そこで、3学部に共通の「専門共通基礎I」の履修に加えて隣接学部にかかわる「専門共通基礎II」を履修することによって転学部の可能性が開かれるように設計しました。
ただし、転学部には一定の要件が課せられますので留意してください。

■主体的な学びのための「体験型探究科目」

変化の時代に対応できる「学ぶ力」を身につけるには「自ら学ぶ体験」が必要です。自転車の乗り方を忘れた人はいないように「体験的な学び」の成果は忘れることがありません。本学は、全学共通科目群の中に「体験型探究」という授業科目を設けました。その多くは大学のキャンパスの内と外――広く大学を取り巻く犬山市全域を学びの場と考えたフィールドワークです。
皆さんは興味のあるプロジェクトを選択し、教員とともに体験的な学びに取り組みます。この学びがそれぞれの専門領域での「主体的学び」につながるきっかけとなり、「学ぶ力」を修得することにつながることを期待しています。

■社会人基礎力を高める「共通科目」

「共通科目」群は、外国語科目、情報科目といわゆる「教養科目」から構成されます。外国語力、特に国際共通語としての英語と情報(コンピュータ)のリテラシーは、21世紀を生きる社会人にとってなくてはならない技術です。在学中にこの力をじっくり鍛えてください。
また、皆さんそれぞれの専門領域とは異なった教養的知識は、社会人としての皆さんをキラリと輝かせる素養です。本学は、多様な領域の学問を今日的な問題や課題に照らして学べるようにカリキュラムを一新しました。
さらに、皆さんが語学、情報スキル、簿記などを自由に学び、進んで検定試験などにチャレンジすることを支援します。検定合格、資格取得は皆さんにとって将来の財産であると同時に、達成感と自信の獲得につながると思います。

3 大学の学びは「なぜ?」から始まる

大学は「学びの場」であり、学びを通じて、学生が相互に、また学生と教職員が切磋琢磨する共同体です。ただし、大学における学びはこれまでの学びとは大きく違うことに、皆さんはやがて気づくと思います。
高校卒業までの皆さんの学びは、大学受験合格に必要な知識を先生から教えられ、それをしっかり頭に叩き込むこと――これが基本的な目的であったと思います。帰宅後に自主的に勉強する場合でも、「教えられたことをしっかり頭に入れる」ことが基本的なあり方だったと推察します。
高校生全体を考えた場合、このように「詰め込み型」の学び方になじめない人たちが圧倒的に多いのだと思います。じつは、大学における学びは、これまで皆さんが教えられ、覚えこんできた知識を「疑う」ことから始まります。「疑いを持つ」ことが「大学における学び」すなわち「学問」・「科学」の出発点なのです。

■社会科と社会科学の違い

「社会科」と「社会科学」の違いということを考えたことがありますか。大学では、社会科ではなく社会科学を学びます。社会科とは、人間社会に関する健全な「常識」を学び取る学科です。これに対して大学で学ぶ社会科学は「常識を疑う」ことから始まるのです。
「常識」に対して疑問を発するところから「科学」が始まるという点は、自然科学を例に取るとよくわかります。「すべての事物は神の創造物であって、不変である」と考えられ、「それは本当?」とか「なぜ?」と問うことを禁じられていた時代には、科学の発達はありませんでした。
ガリレオが、教会の権威に抵抗し「それでも地球は動く」と言ってコペルニクスの地動説を支持した話は有名ですが、止むことを知らない好奇心と、常識に対する鋭い疑いと、注意深い観察力、そして卓抜な推理力を備えた人々の存在なしには、近代や現代の自然科学の発達はありませんでした。

■「なぜ?」は「問題意識」から生まれる

それでは「これは本当?」とか「なぜ?」という疑問は、どこから生まれるのでしょうか。
社会や自然に漫然と向き合って「常識」を無批判に受け入れる姿勢からは、「なぜ?」という疑問は生まれません。「なぜ?」という疑問が生まれるには、社会や自然の在りように対する強い関心や、これをどうにかしたいという「問題意識」が重要な働きをします。
ですから、大学における学びにとって一番大事なのは、「なぜ?」を引き出す「問題意識」を磨くことだと言ってよいと思います。そうだとすれば、これから始まる皆さんの「学びの場」は、大学の教室やキャンパスの中あるいは教科書の中にとどまることはできないはずです。

■活動空間を拡げ問題意識を磨く

もちろん、大学での学びの中には、語学力とかコンピュータ処理の技術とか、社会や文化を理解するための基本的な知識など、教室で「学び取り、身に着けなければならない」知識や技術の習得が含まれます。しかし「知識や技術」を豊富に習得すると同時に、「問題意識」を磨くことが重要です。
「問題意識」を磨くには大学が用意する授業だけでは不十分です。キャンパスの外へ出かけて直に社会に触れてください。映画や音楽や絵画など芸術作品にも触れて下さい。また、大切なのは、いろいろな種類の課外活動や社会活動と、それを通して得られる友人たちです。様々な人との出会いは、皆さんの「知性」と「感性」を磨く上で大切な役割を果たしてくれると思います。

満開の桜に彩られた4月、皆さんとの出会いを楽しみにしています。このキャンパスに皆さんのみずみずしい知性と感性が躍動することを、名古屋経済大学におけるこれからの日々が皆さんの人生にとってかけがえのない時となることを、心から願います。