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入学式学長式辞

2013/04/01

2013年度入学式学長式辞

学長 佐々木 雄太

名古屋経済大学、名古屋経済大学短期大学部、そして名古屋経済大学大学院に入学されたすべての皆さん、ご入学おめでとうございます。本学を代表して、心からお祝いと歓迎の意を表します。本日から始まる皆さんの新しい日々が、それぞれの人生の実り豊かなひとつの時代となることを願ってやみません。本日を人生の大きな節目のひとつと考えて、思いを新たにし、抱負を暖め直してください。
 大学入学までの道のりは、決して平坦ではなかったと思います。しかし、大学入学は終着点ではありません。新たな出発点です。皆さんは、どうか、今の自分に満足せず、さらに成長を目指してください。

■大学で何を学ぶ?
 さて、皆さんは、大学で何を学び取ろう、何を身につけたいと期待しているのでしょうか。すでに、保育士あるいは管理栄養士を目指そうなどと、はっきりした目的をもって学部を選択された人もあるでしょう。大学院へ入学の皆さんは、当然のことながらそれぞれの研究課題や学修の目標を立てていらっしゃると思います。
 一方、高校卒業の段階で、生涯の仕事とすることを一つ決めるというのは、難しいことです。大学や学部の選択に苦労された方も多いと思います。あらかじめ目指す目標がはっきりと見えなくても、入学した大学での学びを進めながら、自分の将来、自分のキャリアをデザインしていくというのは、ひとつのまっとうな在り方です。2年間の、あるいは4年間の学びの中で、自分の道を見つけ出してください。

大事なことは、小さくてもいいですから、目標を立てて、それを一つひとつ達成していくことだと思います。ひとつのことを達成すると、そこに達成感と自信が沸いてきます。また、次の目標が立ち現れてきます。そんな、螺旋形の学びのつながりが、皆さんの将来を形作っていくわけです。
 どうか、1日1日を、1年1年を大切に、着実な歩みを重ねてください。

■世界は変化している
 今、世界は大きく変化しつつあります。経済を中心に私たちの生活全体が「グローバル化」と言われる時代を迎えています。ヒト、モノ、カネが国境を越えて活発に移動し、私たちの身の回りにも、食べる物から着る物まで、世界のあちこちの産物があふれています。一方、日本企業がアジアだけではなくアフリカを含む世界各地に進出して活動しています。皆さんも将来、海外に仕事を持つということが当たり前になるかもしれません。そんな「グローバル化」の時代には、名も知らない地球の反対側の地域の出来事が、私たちの日常生活に直接影響を及ぼすことがしばしばおこります。

世界は「予測不可能な時代」、「変化の時代」を迎えています。「変化」ということを考える際には、2011年3月に東日本で起きた想像を絶する災害と原発事故を忘れることができません。この大震災と原発の大事故を経験して、産業や社会のあり方を含めて「何が大切か」にかかわる人々の価値観が大きく変化しつつあります。私たちは「変化の時代」、「予測不可能な時代」に向かいつつあると言っていいと思います。

■「一に人物、二に伎倆」
 皆さんは、大学での、短期大学での学びを通して、このような変化の時代を生き抜くために必要な力を身につけなければなりません。変化の時代を生き抜く力とは、どんな力でしょうか。
 本学を含む市邨学園の創始者である市邨芳樹先生は、今から100年以上も前に、建学の精神つまり大学の基本理念を「一に人物、二に伎倆」と示しました。「伎倆」とは、知識や技術のことです。市邨先生は、「伎倆」よりも第一に「人物」であるというこの言葉に、教育が単なる知識の詰め込みに終わるのではなく、何よりも人間としてのよき資質を身に着けた「人物」を育てることを目的にしなければならないという趣旨を込められたのです。
 この教えが、今、大きな変化の時代に、あらためて輝きを持ち始めています。

なぜかといいますと、社会が大きく変化する時代あるいは予測困難な時代にあっては、教えられて覚え込んだ「伎倆」すなわち知識や技術は、やがて役に立たなくなるかもしれません。情報科学や生命科学の分野をはじめ、科学や技術の進歩がいちだんと勢いを増してきたことを見ても、これは明らかです。今日、考えられないことが明日には実現するかもしれません。ですから、これまで常識とされていた知識や技術は役に立たなくなるかもしれないのです。

そうだとすれば、皆さんに必要なのは、たくさんの知識を詰め込むことではありません。「変化の時代、予測困難な時代」に必要とされる力とは、これまで出会ったことのない状況に遭遇した時に、その問題を解決し克服する力、つまり、そこにどんな問題が含まれているかを発見して、それを解決する糸口を探し出す能力です。これを「学ぶ力」・「考える力」と言ってよいと思います。皆さんに必要なのは、この「学ぶ力」・「考える力」を身につけることです。
 これまでの「知識詰め込み」型の学びになじめなかったという皆さんも、尻込みをする必要はありません。むしろ、詰め込まれた知識ではなく、「学ぶ力」がものをいう新しい変化の時代を、チャンス到来と考えてください。

■「生徒」から「学生」へのススメ
 大学における「学び」の姿勢について、もうひとつお話しします。
 東京大学の研究グループの調査では、大学生の4人に3人が、「大学でも、必要なことはすべて授業で教えてほしい」と考えているということです。これは、困ったことです。なぜならば、大学では、「教えられたことを覚える」のではなく、「教えられたことにヒントを得て、自ら学ぶ」ことが基本だからです。
 皆さんは「生徒」と「学生」の違いということを考えたことがありますか?今日から皆さんは「生徒」ではありません。「学生」です。中学・高校での皆さんは「生徒」=教室などで「教えを受ける人」でした。しかし、今日からの皆さんは「学生」=「自ら学ぶ人」なのです。
 ゆめゆめ自分を「生徒」だなどと名乗らないでください。「生徒」と呼ばれたら異議申し立てをしてください。本日ただいまから、皆さんには「自ら学ぶ人」としての、「学生」としての自覚をもって大学生活を送ってほしいと思います。

■何でも与えられた生活からの脱皮
 ところが、「学生」になることには、おそらく戸惑いが伴うことと思います。2週間前の卒業式で「卒業生の言葉」を語った学生も、入学直後の思い出として、まったく知らない空間に放り出されたような不安な思いをしたと語っていました。皆さんも同じような思いをすることと察します。
 なぜかと言いますと、おそらくこれまでの皆さんは、家庭においても、学校においても、必要なものを周りから与えられて育ってきたからです。
 もちろん、個人差はあると思います。しかし、高校までの皆さんには、毎日の生活スケジュールが周りから与えられていました。時間割は学校が決めて、皆さんに与えました。教科書も学校が決めて皆さんに与えました。家庭でも、皆さんは、決まった時間に母親に起こされて、決まった時間に食事を提供されて、学校へ通っていた――つまり、総じてこれまでの皆さんは、与えられた環境で、与えられた「きまり」に従って、毎日の生活を送ってきました。「周りから与えられることが当たり前」の生活を送ってきた人が多かっただろうと推測します。
 大学生としての、「学生」としての生活の戸惑いは、まずここから起こります。

■「自由」になることへの戸惑い
 大学生活には、これまで皆さんに対して周りから与えられてきた「きまり」は、もうほとんどありません。毎日の生活のパターンは皆さん一人一人の設計次第です。
 例えば、「時間割」は先生や大学が与えるのではありません。皆さんが自分で作らなければなりません。教科書が指定されることはありますが、どんな本を読んで、何から勉強するかなどは、自分で決めなければなりません。自宅通学生と遠方出身の下宿生とでは程度の違いがあると思いますが、何時に起きて、何時にどこでどんな食事をするかは、皆さんが自分で決めなくてはなりません。
 何でも自分で決めて、自分でしなければならない――このような「自由」が、おそらく皆さんにとって戸惑いの要因になると思います。

■「自由な学生生活」への脱皮
 私たち教職員は、そんな皆さんが、戸惑うことなく大学生活・学生生活に馴染むようにできるだけの支援をしたいと思います。
 しかし、高校までの先生に比べると大学の先生は「冷たい」と思えることが多いと思います。友達もそうかもしれません。小学校、中学校から顔なじみの友達はなく、声をかけようにも、ちょっと距離がありすぎる、そんな思いをすることがしばしばあると思います。じつは、相手もそんな思いをしていることが多いのです。ですから、勇気を出して、お互いに一歩、近づいてみてください。友人をたくさん作ってください。良き友との出会いは、人生の宝になるでしょうし、皆さんの学びや人間的な成長の大事なきっかけにもなると思います。
 どうか、できるだけ早い時期に、「何でも与えられた生活」から脱皮して、「自由な学生生活」に馴染んでください。

最後に、繰り返して申し上げますが、どうか皆さんには、今の自分に満足せずに、思い切り背伸びをして、課題を見つけ、果敢に挑んでください。皆さんにはまだまだたくさんの「のびしろ」があります。成長の可能性が潜在しています。私たちは皆さんの背伸びに応えて、その限りない成長を支援します。
 本日、この日から、このキャンパスで、皆さんのみずみずしい感性と闊達な精神が躍動することを期待して、歓迎の言葉といたします。