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2025.07.14

真のエシカルを実践した小さな肉屋「サイトウハム(株式会社サイトウ)」の ブランディングの取り組み事例から学んだこと

経営学部経営学部

今回「商品と流通の経営学①」の授業で外部講師の平野 朋子先生をお招きして,ブランドを構築するために必要不可欠な8つのステップに関する基本的な知識を学ぶことができました。この8つのステップは,汎用的で再現性のある一般財団法人ブランド・マネージャー認定協会独自のブランド構築手法です。また,平野先生ご自身がブランディング・コンサルタントとして,クライアントである「サイトウハム(株式会社サイトウ)」と真摯に向き合いつつ,戦略的な視点からブランディングを実行することで,V字回復を遂げて業績アップに成功したリアル・ストーリーを教えてくださいました。このブランディングの取り組みは,昨年11月に有楽町朝日ホールにて一般財団法人ブランド・マネージャー認定協会の主催により開催された第12回公開シンポジウムの「BRAND MANAGEMENT AWARD®」で準大賞&最優秀賞を受賞しました。審査員と参加者の方々から非常に高い評価を受けた成功事例です。

 

今回の平野 朋子先生の講義で学んだことを簡単にまとめると,以下のとおりです。

①2026年に創業50周年を迎えるサイトウハムの歴史そのものが,従業員と牛・豚・鶏を飼育する契約生産者,顧客,地域社会などとともに築き上げてきた信頼関係の証であるという点です。

②サイトウハムは,創業時から脈々と受け継がれてきた創業精神や経営哲学を深く反映した企業理念「生命を大切に」に基づきつつ,近年企業を取り巻くマクロ環境変化の1つである「エシカル消費」市場の成長を機会として捉え,真のエシカルを徹底的に実践し続けているという点です。

②エシカル消費とアニマルウェルフェアを重んじつつ,サイトウハムが顧客に対して本当に提供したい本質的価値であるブランド・アイデンティティ「本物の一流肉を,汚すことなく届ける」をお肉づくりの全ての工程から顧客の食卓に至るまで一貫して体現し続ける取り組みの姿勢そのものが,競合他社にとって簡単に模倣できないサイトウハムならではのブランド競争力であり,差別的優位性であるという点です。

③時代の変化とともに,新規顧客を獲得するために進化・変革・挑戦を続ける革新活動(40代・50代の新規顧客に共感してもらえるようなさまざまなブランド・コミュニケーション・ツール=レビュー,SNS,ギフトサイト,ECサイトなど)を通して,一貫して本質的価値を伝え顧客の心を動かすことで,新たな市場価値(エシカル消費を重視しながら無添加のハムやソーセージを買い求める新たな顧客層)を創出することができたという点です。

④サイトウハムの自社ブランドの定義「大量生産と違う,良心的で誠実な肉屋である」を明確化することと,ブランド・アイデンティティと潜在的な価値を可視化することで,顧客をはじめとする多様なステークホルダーから共感を得ることができたという点です。

⑤サイトウハムでは,どんな困難な状況でも決して屈せず,新たな事業機会を積極的に追求しようとする創業者の強い企業家精神が受け継がれているという点です。

⑥サイトウハムの創業者は,予想外での事態または予期せぬ情報に対して,積極的に判断する(強靭な起業家精神を発揮する)ことで,思いがけない幸運な結果を生み出す能力(価値あるものを偶然に見つける能力)を持つ企業家(セレンディピター)であるという点です。

 

ここでいう真のエシカルとは,動物の生命を大切にしながら,人工添加物を使わず,自然素材のみで味を引き出す加工技術を活かすために,「環境」「人」「社会」に配慮した倫理的な取り組みを実践することを意味します。

 

講義を終えての平野 朋子先生の感想

本日は貴重な機会をいただきありがとうございました。社会人向けには何度もブランディングを伝えてきましたが,大学生向けの講義は初めてで,とても新鮮な経験でした。基礎理論をなるべくわかりやすくと思い,ブランドの例を交えながら話しましたが,学生の皆さんにどこまで届いているだろうかと様子を見ながら進めました。

講義中は教室内を歩きながら講義をしてみましたが,近づくと「聞いていますよ」という姿勢を取る学生が多く,その素直さが印象的でした。冒頭に簡単なワークを実施し,近くの学生同士でシェアをしてもらいましたが,びっしり書く学生,少しだけ書く学生,全く書かない学生など反応が様々で,リアルな大学生の空気を感じることができました。

多くの留学生も参加しており,それぞれが挙げるブランド名が異なることも興味深く,国や文化によってブランド想起が変わることを改めて学びました。

大学生時代は勉強より遊びやバイトを優先する時期かもしれませんが,社会人になり学び直す経験をしている今,思い切り学びに集中できる時間がどれほど貴重かを痛感しています。わずか60分でしたが,この時間が学生の皆さんにとって何か一つでも記憶に残り,学びや将来を考えるきっかけになればうれしいです。

それでは,学生のみなさんの感想も楽しみにしています。引き続きよろしくお願いします。

 

平野 朋子先生の講義を聞いて学んだ「商品と流通の経営学①」の受講生たちのとても素晴らしい感想文の内容は,下記のPDF資料をご覧ください。

http://www.ssm-gcbm.com/pr/pdf/sbi.pdf

写真➀平野 朋子先生の講義の様子

写真➁平野 朋子先生の講義の様子

写真➂平野 朋子先生の講義の様子

写真➃平野 朋子先生の講義の様子

写真➄平野 朋子先生の講義の様子

写真➅平野 朋子先生の講義の様子

写真➆平野 朋子先生の講義の様子

 

最後に,今回ご講義をいただきました平野 朋子先生にこの場を借りて心より深く感謝申し上げます。

 

名古屋経済大学経営学部准教授

徐 誠敏 先生